From Sibelia With Love -ラーゲリより愛を込めて-
さて、何から話そうかな・・・
この作品は公開当時映画館で見ることが叶わず、プライムでやっと見れたのだけれど、ああやはりと思った映画。なぜならこれは私の祖父母のストーリーと重なる部分が多かったから。主人公の山本と祖父が違う点は、わが祖父は7年抑留ののちに帰国したところ。そして、山本の妻と違い、私の祖母は当時非常に体が弱く、周りの手助けなくしては幼子一人抱えて生きていけなかかっただろう。
祖父は生前、シベリア時代の話をほとんどしなかった。それは陸海問わず戦禍を紙一重で生き延びてきた元兵隊たちに共通することだと思う。ただ、食べられるものは何でも食べた(動植物昆虫類から爬虫類・・まあいろいろ)という話を引き合いに、「(こんなに食べ物がある豊かな時代だからこそ)好き嫌いしねえで全部食えよ」と常々言われたものだ。幼い孫に話すのはそんな程度のもの。ただ、よく悪夢にうなされていると祖母が何度か教えてくれた。映画でも表現されていたが、極寒の地でガタガタ震えながら眠りにつく捕虜たち。前の晩に眠る前までしゃべっていた友が、朝目を覚ますと隣で冷たくなっているという記憶が現実と交錯する夢。夢の中で何度も追体験をしていたのだと思う。
祖国日本に戻ってきたあとだって、順調に幸せだったわけではない。特に祖父は長くロシアにいたせいで「アカ」と呼ばれ、職にもしばらくつけない日々。出征前に暮らした大きな家はほかの家族に取られ、自分の家の小屋で暮らす中、その小屋にさえも「監視」目的で何度となく警察が踏み込まれる日々・・。
主人公の山本夫妻らとまったく同じ過程ではないにせよ、とにかくこの映画が描く世界は私の祖父母が力強く生きてきた道程と折り重なっていて、それが私には堪えた。鑑賞後わずかな希望を抱きつつもみぞおちにつかえる重い感情。山本夫妻の生涯に負けないほどの激動の生涯を、共に手を取り生きた春一と好の物語がある。その証が私の父であり、私なのだということ。
戦争はしないほうがいい。
戦争が必要なのは誰?戦争が必要な理由は何?
少なくとも慎ましく生きている人間一人ひとりには不要なもの。このささやかな日常こそが幸せであるということ。諦めなかった春一と好の物語をいつか私が形にできますように。
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この映画の主題歌はMrs.Green Appleの「soranji」。圧倒的な世界観で一気にあの時代へ連れていかれる感覚。そして没入感。ミセスの高みのさらにその先へ導くような数珠の一曲。ほんと涙腺ゆるゆるになるんですけど。
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